
工期:令和5年10月20日~令和6年7月31日
発注者:国土交通省 関東地方整備局 日光砂防事務所
本工事は、日光砂防事務所が管内で運用する黒岩気象観測所において、経年劣化した気象観測装置の更新を行い、観測精度の向上と設備の安定稼働を図るものです。対象となるのは、山間部に設置された気象観測装置1式で、これを撤去したうえで新たな観測装置一式を設置します。

更新される主な機器は、視程計、降水計、気温計、風向風速計、気圧計、湿度計などの各種センサー類に加え、WEB方式の監視カメラと観測データを記録・送信するロガー、総合制御装置、無線通信装置、電源設備(太陽光発電および蓄電池)などです。これらは全天候型で屋外に設置されるため、耐候性に優れた仕様が求められ、架台、配線、端子ボックス、避雷器類もあわせて新設します。

約1トン分の既設機器撤去にあたっては、装置の取り外し後、観測所から日光砂防事務所までの約10.0kmを安全に搬出します。現地はヘリポート経由での資機材搬入が必要な山岳地帯であり、現場までの移動手段や作業時間に制約があるため、施工効率と安全確保の両立が重要となります。

設置作業では、観測ポールや架台の基礎設置、センサー類の高所取付、通信機器の設置・調整、太陽光パネルと蓄電池の配線接続など多岐にわたる作業を実施します。観測データは遠隔地の管理所に送信されるため、通信試験や機器設定も現地で行い、正常なデータ取得を確認した上で引渡しとなります。
また、現場は降雪や霧など気象条件が厳しく、設置作業は天候と連動した柔軟な工程管理が求められます。安全帯や仮設足場などを用いた高所作業や、作業時間の制限を考慮した機材の搬入計画、現地での事前調査に基づく施工手順の策定など、現場特有の対応が求められました。
このように、本工事は気象監視体制を支える中枢設備の信頼性向上を目的としたものであり、山岳地における観測装置の施工ノウハウが求められる、専門性の高い電気通信設備工事です。